陵辱ファンタジジアその2


翌日。

私はらしくもなく胸元のふくらんだ、裾広がりのドレスの出で立ちで大神の御前に、戦果報告に参上した。昨夜部下たちと口裏をあわせたとおり、アルビオンの聖剣の魔力に遅れをとり、逃げ帰らざるを得なかった旨の事実を淡々と述べる。
保身のために回りくどい言い方をするのは大神の好まれぬところであったし、私自身本来得意ではない。それになるべくならこの方に嘘をつきたくないというのもある。

「それで、珍しくドレスというわけか」

全ての情報が集まるという玉座の上で、苦笑を浮かべた片目の神が小さくうなずく。どうやら私の姿を、失態を取りなすための一種の媚びととられたらしい。
私は肯定も否定もせず、ただ頭をたれた。

「面目次第もありません。大神の名代として地上に赴いたこの私の失態、いかなる術をもっても雪ぎたいと存じます」

ドレス姿にはいささか不似合いな片膝をついた姿勢のまま、私は顔を上げ、大神に応えた。
だが、大神は軽く首を振り、続けた。

「いや、仮にも神を殺す剣と呼ばれた聖剣相手に神ならざる身のお前を差し向けたはわが身の増長。主の罪ではない。その件は後にテュールかフレイに任せよう。それよりも良く無事で戻った。お主の美しさにいささかの傷もないのを見て私も安心した」

と、大神自ら玉座をおり、私の体を抱きしめる。金の髪を撫で、純白の翼の香りを愛でる。一瞬、汚れたこの身を気取られぬか杞憂に襲われたが、どうやらそれもなかった。

「いつもの凛々しい戦装束も美しいが、今日のお前はまた一段と美しい」
「光栄至極にございます」

大神の言葉に一歩身を引き、再び頭を垂れる。

「それと、今宵の祝勝会には参加してくれるな? お主はいささか辛いかも知れぬが、同じく人間界攻略にあたったテュールもフレイも、それなりの戦果を上げておるし、こちらの守りを固める雷神トールの労もねぎらってやりたい。お前が来るのと来ぬのでは、座の盛り上がりに大きな影響が出るからな」

「....かしこまりました」

正直、いささか気は沈んだが、大神にここまで言われては断わることも出来ない。
会への参加を約束すると、早々に大神の前から身を引いた。次に私が尋ねたのは、私の専属の武具鍛造を勤めるドヴェルグ小人のディレンの工房であった。先の戦で失った神鉄の武具の代わりを鍛えて貰いたいのはもとより、実は武具鍛造に使う金鋸を借りたいというのが本音であった。

「ディレン、いるか」

工房の入り口をくぐり、私は奥にいるであろうその場所の主に声をかけた。

「その声は姫様だね、ワシの作品に不具合でもあったかね」

工房の奥から老いてはいたが甲高い声が聞こえる。その声は自信に満ちあふれ、私が彼の作品に文句をつけるはずがないと信じ切った声であった。

「剣も胸当ても見事に断ち切られた。代わりを鍛えて欲しい」

対照的に深く沈んだ私の声。信じられんといった声を上げた鍛治屋に、淡々と事情を説明する。

「それと....」

と、私は続けた。

「お前の工具箱の中から、金鋸を貸して欲しい。金や銀の切れるやつを」
「いきなり何をおっしゃいます。仕事道具はワシの命、おいそれと人には貸せませんぞ。例え、姫様とてね」

気持ちはわかる。私とて、突然剣を貸せと言われたら拒むだろう。私は、老鍛治師に全てを晒す決意をした。

老鍛冶師の前で、私は黙ったまま胸元を開き、裾をたくしあげた。

「な!」

突然の私の行動に、老人が声にならぬ声をあげる。だが、老人の前にさらけ出されたのは充血した乳首と性器に施された屈辱のピアス。それはとても神軍の姫将軍と呼ばれた軍天使の裸身ではなかった。恥辱に、顔を朱に染めながら、私は老人に事情を説明した。

「先のアルビオン攻略に失敗して、返り討ちにあった。鎧も衣も奪われ、服従の証にこの飾りを縫いつけられた。頼む、外してくれ」

もはや老人と目をあわせることも出来ず、横を向き、目を潤ませて私は頼んだ。

「これは....」

老人が目を丸くして私の性器に顔を近づける。

「しかし、こう留め金が....その、おまめさんに食い込んでいると、外せと言われても」
「頼む!」

全ての秘密を晒してしまった老人に、私は泣きながら哀願した。

「そりゃ姫様の御命令でしたら何でもしますが....」

老人は、しばらく考えを巡らせた挙句、私に金床をまたぐように命じた。

「じゃ、姫様、ちょいとその金床またいで、腰を突き出して、じっとしてもらえますか」
「わ、わかった。....こうか?」

私は、老人の言うがままに工具台の鋼の天板をまたぎ、無様な飾りを施された性器を前へと突き出した。氷のように冷たい鋼の金床が、銀を打たれた秘唇から熱を奪い、凍えさせる。老人の作業がしやすいよう、しかし鉛の烏が秘肉にめり込まぬよう中腰に腰を落とし、老人の仕事を待った。

「それでいいですか? 姫様。作業が始まってから動いてもらうととんでもないコトになっちまいますから、今のうちに腰を落ち着けてくださいよ」

中腰の私を心配して老人が声をかけてくる。だが完全に腰を落とすと鉛の烏が秘肉に喰いこむ上、陰核のシャフトがてこの原理で陰核をひきちぎりそうになってしまう。両の手をお尻の後ろの天板に添え、私は逆海老に腰を突き出す。

「このままで構わん。始めてくれ」

恥辱に顔を真っ赤に染め、私は答えた。自分の声が、自分でもわかるほど震え、今にも泣き出しそうな鼻声になっているのがなんとも情けない。

「鋸が響いて多少痛むかもしれませんが....」
「構わん。私が泣こうと呻こうと気にするな」

口先とは裏腹に、体は先日の地獄の苦痛を思いだし、怯え、震える。怯えた私の目を見ながらも、老人はついに金鋸を私の陰核のシャフトに押し当てた。

「!!」

ゴリッ、ゴリッゴリッ!ことさら慎重に、出来るだけ気を使って作業を進めてくれている老人の気使いにも関わらず、陰核から腰、腰から脳へと直撃する衝撃が私を襲う。

「うわあああああああああっ!」

あまりの衝撃に、思わず声を張り上げて叫んでしまう。涙がほとばしり、腰から下が動かせないもどかしさに、余計に衝撃が増す。

「駄目だ! やめて! やめてやめてやめてやめてぇっ!!」

だだっこのように首を振り回しよだれと涙で顔を濡らしながら今度は、さっきとは逆の哀願を口にする。だが、老人は最初の命令を忠実に、私の泣き言には耳も貸さずに作業を続ける。

「ひぎっ! 痛い! 駄目! お願い! 本気で痛いの!」

呻き、首を振り、腰を震わせ、痙攣する私に、老人がようやく作業の手を止める。
しかし、一瞬遅く、私はその作業台の上で失禁してしまった。緊張の糸が途切れ、私は無様にも放尿を続けながらしゃくりあげる。

「ぐすっ、ぐすん。....もう嫌ぁ....。このままでイイよぉ」

真っ赤に腫れあがった陰核を丸出しにしたまま、両手で顔を隠し、私はすすり泣いた。その場にあった手拭で、老人が私の下の始末をしながら、不手際を詫びる。

「ううむ。もっと安全なすべを何か、考えてみるとするか。姫様」
「頼む」

老人には感謝しながら、私は小さく頭を下げた。結局、屈辱の印はそのままに、ドレスを元に戻す。と、逃げるようにその場を去ろうとする私に、老人が壁際の、一際見事な大剣を手にとり、私に差し出す。

「剣と胸当ても予備はございますが、姫様のそのおっぱいでは痛むかもしれませんね。そっちもなんとか工夫してみますんで、剣だけお持ちください」
「すまない。....何から何まで、世話をかけて....。本当に、感謝の言葉もない」

優に私の肩までありそうな長大な剣を、老人は当然のように女の私に渡す。
この長さの剣を愛用する剣士となると、この神軍にも数えるほどしかいない。
それもどちらかといえば先細りの、軽量化のはかられたこの大剣は、あきらかに私の為の剣であった。

「そりゃ、姫様ほどの剣士に剣を振るってもらえれば、鍛治屋としてはこっちから礼が言いたいぐらいですよ。....本当に姫様の太刀捌きはお美しい」

世辞ではなく、本心から言ってくれているであろう老人の言葉も、先日の屈辱の敗北を喫した身には寒々しく聞こえてしまう。しかも、あの敗北は剣のせいではない。私の腕のせいだ。

「ありがとう」

取り合えず剣だけ受け取ると、私はどうにか落ち着いて老人の工房を去ることにした。淡いバラ色のドレスの腰に剣を結わえ、神の宮殿の中を私室へと急いだ。

私室にかえった私は、老鍛冶師が私の為に鍛えておいてくれた大剣を胸に抱いたまま、気がつくといつのまにか寝台の上で寝息を立てていた。このところいろいろな不幸がありすぎて、いつのまにか神経がすり減っていたのであろう、私は、むしろ再び剣をこの手に抱いた安心感から、泥のように眠り込んでいた。

どのくらい眠っていたのであろうか。やがて目を覚ました私は、寝台の横に腰を下ろした人影に思わず身を固くした。誰だ! そう詰問するより早く、相手の正体に気付いた私は、相手の無礼を責めるより早く、自分の無様な姿を恥じた。

「フ、フレイ様?!」

左手に剣、右手でまくれ上がった裾を直しながら、私は顔を明らめる。ヴァナフロイ。アスガルドの王オーディンとその妃フリッガを除いては、最も尊い神の一柱である。

「遠征で疲れたのかい? 話は聞いてるよ。大変だったね」

天界で最も尊く、最も美しい神の一人である彼が、低く囁くように私の労をねぎらってくれる。一瞬、すべてを見透かされたかの恐怖に身がすくむが、無論彼の知っているのは大神に報告した範囲内の話であるはずだ。心に秘めた恥辱と恐怖に胸が早鐘のように鳴り響くが、表情は努めて冷静を装い、彼の言葉への返事を必死に捜し求めた。

「だが、部屋に鍵もかけずにドレスのまま眠るのは感心しないな。特に君のような女性ならね」

口許に少しいたずらな少年のような笑みをたたえて彼が続ける。

「美しい上に気が強いと、いらない敵をつくるよ。女にも、男にもね。そんな君が無防備な姿をさらしていると、つまらない悪戯をされるかも」

奔放なドンファンの他愛ない冗談のような彼の言葉。だが私はあわてて胸と、そして股間をまさぐり、誰にも何も見られていないことを確認しようとする。
せめて下着を身につけておけば、その違和感から脱がされたならすぐに察することもできるのだが、残念ながら今の私は下着すら身につけてはいない。
もしも眠っている間にドレスの裾がまくれ上がっていたりしたら、どうなっていたことか。おそらく、この世の終わりでも来たような顔をしていたのであろう。

麗しの男神はそんな私の不安を笑いとばすように、そして私を怒らせ、元気づけようと屈託ない笑い声をあげた。

「冗談だよ。ライラ。君に手を出そうなんて不埒な奴はこの城にはいないって。それにもしいたとしたって、そいつらを追っ払うためにオレがここにいたんだから」

と、男神が急に真面目な表情をつくる。

「お姫様を守るために、ナイトはいるんだから」

男神の言葉に、私は自分でも顔が紅潮するのが感じられた。

「じょ、冗談はおよし下さい! 閣下!」

ドレスの胸元を隠し、身を小さくして必死に答える。決して不実ではないながら、恋多き神の言葉に、不安な心が崩れそうになるのをごまかす為だ。だが男神は結局肯定も否定もしないまま、包み込むような視線を私に向けつづけた。
耐えきれずに視線をそらせたのはやはり、私の方だった。

「私は、神々に仕える軍天使です。そんな優しい態度をとっていただけるような・・・」

甘えるような、鼻にかかった小さな声。自分でも嫌になるぐらい、慰めを要求した発言だ。言ってから思わず自己嫌悪に陥った私の顎を男神の指が押さえ、力を入れずに上を向かせる。男神の真摯な視線にどぎまぎしながらも、私の中にはこのまま成り行きに流されたいという欲求がふつふつと沸き起こる。男神の唇が、私の顔に近づく。このまま状況に流されたいと願いつつも、敬愛する上官との関係を壊したくない一心で甘美なその瞬間から身をよじり、逃れる。

「駄目です。私はあくまで一介の軍天使です」

こんなときだけ「女」になろうとする卑怯な自分に自己嫌悪を感じつつも、甘い男神の優しい仕種に身をゆだねたがる心に鞭を打ち、きっぱりと誘惑を拒絶する。

そんな私を心配そうに、寂しそうに見つめる男の瞳。いつも気を張り詰めさせ、精一杯肩肘を張ってきた私には耐えられない優しさだ。私を、こんなふうに慈しんでくれるのは彼だけだ。だけど、私は自分を変えられない。私はアスガルドの姫将軍と恐れられた軍天使ライラなのだから。

「わかったよ」

やはり不興を買ってしまったのだろうか。彼の言葉が怒ったように、そっけなく、突き放すように私の心に突き刺さった。その瞬間、私は自分で招いた結果ながら顔面を蒼白にして自分の不躾な態度を悔いた。自分でも、自分の顔が捨てられた小犬のような脅えをたたえているのがわかる。

「その代わり、今日のパーティーでは埋め合わせしておくれよ。一曲、踊ってくれるよね?」

つっけんどんな態度を急にひるがえし、彼は微笑みすら浮かべて、付け加えた。
どうやら、怒ったわけではなかったようだ。きっと、私をからかっていたのだ。

そう思うがしかし、怒りよりも安堵が先に立つ。口の端にかすかな微笑をたたえて、私は顔を伏せ、頷いた。しばらく、私たちはそのまま、黙って何をするでもない時間を共有していた。無論しばらくといってもたいした時間ではなかったが、その甘い時間に私の、アルビオンでの失態と屈辱、そして、砕かれた心の痛みは、随分ほぐれたように思えた。あるいは、それは逃避だったのかもしれない。だが、この時が私の人生で最後の「幸せ」だったのかもしれない。

やがて私は、私を呼びに来た侍従の知らせを受け、貴神のエスコートを受けながら大神の広間へと参上した。そこで私が、処刑宣告にも等しい運命をたどることも知らずに。

発覚大神オーディンに次ぐ神聖さと、光明神バルドルに匹敵する美貌を持ち、その知性と剣の腕でも天界屈指との誉れ高い貴神、フレイのエスコートを受け、薔薇色のドレスに金細工の大剣を帯びた私は、大神の祝賀会の会場へと足を踏み入れた。

アルビオンでの失態もあり、いささか人前に姿を晒すことに抵抗はあったが、父神オーディンと、傍らの貴神フレイへの手前、私は精一杯胸を張り、堂々とした態度で会場を横切った。無論、父オーディンを始め、アスガルドの12神と呼ばれる実力者たち、そしてその他の神々への挨拶の為である。天界の将軍、軍神テュール、アース最強の神、雷神トール、そして麗しの女神、貴神フレイの妹神フレイア。

慇懃に、それでいて堂々と神々の間を立ち回り、父神オーディンの前に参上する。

「よくきたな。待っていたぞ」

峻厳な容貌にかすかに笑みをたたえ、父は娘の私を見下ろす。思わず片膝をつきかけ、そしてあわてて腰を沈め、ドレスを持ち上げる。正直、本当に慣れていないのだ。こういう恰好は。やがて祝賀会もつつがなく進み、私は貴神のエスコートを受けながら、当初憂鬱に思っていたはずのこの祝賀会を、いつのまにか堪能し、十分に楽しみはじめていた。大神とは不仲ながらも天界随一のプレイボーイと浮名をはせたロキには及ばぬまでも、貴神フレイもまた十分に女性の扱いに長けた男神で、私のような小娘を退屈させない手練手管は十二分。

私は彼の神のおかげで自分がさながら今回のパーティーの女王であるかのようにこの場を楽しんでいた。そんな、刹那的にこの場を楽しむ私の瞳が3人の男女を捉える。オルニスとヘルギ、それにアルフヒルドの三人だ。三人がそれぞれ正装に身を包み、虚飾に彩られたこの身をあざ笑うかに皮肉な微笑みを浮かべている。

詩神ブラギとその楽士たちの奏でる音楽が、ホールにダンスの華を開かせる。私は、ダンスなどはあまり得意ではないので、日頃はこういう場では好んで壁の華を気取るほうなのだが、今回はそうはいかない。

約束どおり私の手を取り、ダンスの相手を乞う貴神に、私はおずおずとリードをゆだねる。
と、会場に響きわたる一人の女の声が、わずか一声でこの会場のあらゆる音という音を奪った。

「大いなる貴神インガフロイともあろう御方が、この様な汚らわしい女の相手をなさいますの?」

アルフヒルドだ。攻撃的なまでによく通る彼女のソプラノには、これまでも戦場で幾度となく世話になっていた。だが、その声が敵に回ると、これほど恐ろしいものであったとは。攻撃的なまでに、どころではない。本当に攻撃的なのだ。痛いほどの一瞬の静寂。そして今度はざわめきが波のように広がる。パートナーへの侮蔑に、貴神が露骨に怒りの表情を作る。さすがに紳士然とした彼の事、いきなりの口論にこそならないものの、あからさまな敵意をもって、彼女の暴言を咎める。だが、その侮辱を受けた私こそが、その暴言が事実であると誰よりもよく知っていた。恥辱と、このあとに続く事態への漠然とした恐怖に、全身が凍りつく。いつもの私なら決して許さず、無礼討ちすら辞さないであろう暴言に、しかし私はうわずった声をあげ、乾いた抵抗を見せるだけにすぎなかった。

「な?! なんだと? 無礼者め」

全く力も威厳もない、張り子の虎のような威嚇に、無論彼女がひるむはずもない。
大剣を胸に抱きしめ、らしくもなくおびえながら、それでも私は一歩前へ、断固とした闘争のアピールの為の攻めの姿勢を明らかにした。

「無礼者はどちらかや? 天界を裏切り、神軍を裏切り、大神をたばかろうとした破廉恥な牝狼が!アルビオン王は神殺しなど抜いてはおらぬ。さりとてお前が軍門に下ったのは下賤な人間どもの王、アルビオン王ではなかったかや!」

広間すべて、いや、この城すべてに轟かん勢いのアルフヒルドの声。

「アルフ・・・」
「汚らわしい!人間の軍門に下り、汚物すらすすって見せたその唇で、神に仕える私の名を口にするな!」

雷鳴のような女の声が私の心を貫く。そしてその瞬間、きっと会場の・・・事実を知らぬ全ての者がその耳を疑った事であろう。なんとかこの場を取り繕わねば。
そう思えば思うほど、取り繕うべき言葉が口から出なくなる。

「な、なにを・・・」

蒼白の表情で、まるで意味のない反論の言葉を唇から紡ぎ出す。と、その言葉を合図にしたかのように二人の男、オルニスとヘルギが私の両腕を取り押さえ、ねじり上げる。パートナーへの暴行に、貴神が反射的に手を伸ばし、二人の男を止めようとする。だがそれより早く、アルフヒルドが私のドレスの胸元に手をかける。

「やめろ・・・」
「会場の皆々様方!これがこの汚らわしい牝狼の、人間どもの軍門に下ったという確固たる証拠です!」
「やめろぉぉっ!」

私の絶叫と同時に、ドレスの胸元から腰までが一気に引き裂かれる。同時に、肥大した乳房と金色の叢、乳首を飾る二つの貴金のリングと紋章、そして性器に縫い止められた鉛の烏が衆目に晒される。何のことはない。私は、裏切られていたのだ。

周囲の息を飲む音、口々に囁かれるざわめき、声をひそめた嘲りと非難の言葉が交じり合い、意味を持たない喧騒となり、波紋を広げる。

「嫌・・・見ないで・・・」
「見よ! この恥知らずで汚らわしい体を! この女は神軍十万騎のうち、二万の軍天使を従える要職にありながら、人間の軍門に下り、その汚物をすすりて忠誠を示し、その身に人間どもの「神」と「王国」の紋章を誇らしげに縫い止め、恥知らずにも我等が大いなる大神の象徴たる烏を汚らわしい性器に縫い止め、小水を注ぎて汚せし始末。その汚れた体のうわべこそは見目麗しく取り繕えども、その汚れし体と魂は、おそれ多くも大神に偽証報告を成し、その見目麗しいうわべで取り繕おうと、寛大なる貴神フレイ様の庇護のもと、慣れぬ女装でこの場にあらわれたことからも明白!」

女の言葉に、二人の部下が戦場で掲げる首級のように、腕をひねられた私の体を高く宙に掲げ、晒す。腕を取られ、足を床から離された私は、必死に太股を擦り合わせ、性器を隠そうとする。だが、銀のボルトと鉛の翼に縫い止められ、押し開かれたそこを、降り注ぐ侮蔑の視線から太股で隠すのは不可能に近かった。身をよじる度に秘唇がひきつれ、鉛の烏が膣口を弄ぶ。

「やめてくれ・・・」

嘲笑、侮蔑、嫌悪、好奇。会場中の視線が私の体に集中し、晒しものにされたこの体を舐め回すように見つめるのを感じる。私を助けようと手を伸ばしてくれたフレイ神の指が凍りつき、動かなくなる。父神オーディンの一瞬の困惑の表情が、みるみる怒りの形相に彩られていく。娘への非道の怒り? 違う! 娘の裏切りへの嫌悪だ。

「雌豚め!」

告発者の乙女が銀のシャフトをスロットマシンのレバーのように強く引く。
充血した陰核に穿たれた傷穴が裂け、赤い血がしたたる。泣きわめく醜態など、これ以上の恥辱を晒したくなかった私は、唇を噛んで苦痛を堪える。だが、こらえる私をさらに責めたてんと、乙女はでたらめにそのシャフトをかき回した。

陰核の千切れそうな激痛に、膣口からとろりとした濃い粘液がこぼれる。シャンデリアの明かりに照り返り、ゆっくりとしたたる粘液に、乙女の表情がみるみる怒りに染まっていく。

「変態!」

乙女は、鉛の烏を鷲掴みにすると、縫い止められた秘唇ごと引き千切り、むしり取らん力を込めて捻りあげた。激痛が電撃と化して脊髄を駆け登る。びくん。

と一瞬痙攣し、震える尿道口から黄金の雫がほとばしった。小水を浴びせかけられた乙女はみるみる怒りの形相を引きつらせ、私の乳首のピアスに指を掛けると、投げ捨てるように床にできた水たまりに引き倒した。私の顔に足を掛け、床の汚物に押しつけ、後始末を命じる。突き出されたお尻から覗く烏の飾りはまだぽたぽたと雫を滴らせ、会場の明かりにキラキラと輝く。傍らのフレイ神が、汚物でも見るかの冷たい視線を投げかけ、私の元を去る。

私は、予期していたもののその結果に呆然となり、奈落に突き落とされたかのショックで表情を凍りつかせていた。そして、ついに大神が立ち上がった。

「ディレンを呼べ!その雌豚の体を飾る不遜な象徴を、すぐにもぎ取らせろ!この大神オーディンの象徴を、それと知りつつ汚物で汚すとは!最早貴様などは娘でもなんでもないわ!この裏切り者めが!」

怒れる者、暴風神としての素顔をあらわに、大神の怒りがびりびりと大気を震わせる。

「ディレンはまだか! もう良い! わしがやる!」

傍らの神槍グングニルを手に、大神が私に大股で近づいてくる。その姿は、まさに嵐の大帝と呼ぶに相応しい恐怖を秘めていた。

「オルニス! ヘルギ! その不埒者を仰向けに押さえつけい!」

怒り心頭に達したという様子で、大神が私を押さえつける二人に命じる。二人が、乳首に通されたピアスを引っ張り、巧みに私を裏返す。さながら鼻輪で操られる雌牛のように。裏返され、分娩台の妊婦のような恰好で二人の男に押さえつけられた私の、性器をまさぐる鉛の烏に狙いを定め、大神が槍を構える。

「お、お許し下さい! どうか、お慈悲を!」

天界で最も強大な武器の一つに狙われ、私は必死に身をよじって逃れようとする。
だが屈強の戦士二人に押さえつけられた私の足掻きなどは、蜘蛛の巣に囚われた虫けらほどの意味も持たない。腰を揺すり、膝をばたつかせその場を逃れようとあがくが、大神の靴の爪先で私の太股は踏みつけられ、押さえつけられる。股関節の外れそうな疼痛と、突き出される魔槍の恐怖に私の体が怯え、震える鋭い槍の穂先が突き出され、鉛の烏とラビアを繋ぐ銀の環状のピアスを捉える。

神鉄の穂先をくわえこんだピアスは、私のラビアを引きちぎらん程の力を絹糸ほどの切っ先から直接受け止め、無残にも千切れとんだ。太いピアスを引きちぎる程の衝撃を秘唇からたたき込まれ、そのあまりの激痛に私は恥も外聞もなく絶叫した。

私のラビアの方が千切れなかったのが、奇跡のようなまさに暴力的なまでの粛清であった。開いた傷口から血が滴り、心臓が破裂しそうな勢いでばくばくと音を立てる。あまりの激痛に、私はしばらく呼吸すら出来なかった。そしてどうにか私が落ちついたとき、今度は金属と金属が擦れる嫌な音が耳に飛び込んできた。
大神の槍の穂先が、もう一方のラビアを縫い止めるリングにくわえこまされたのだ。

「ひっ! 嫌ぁぁぁぁっ!!」

私は、思わず絶叫し、半狂乱になって首をいやいやと横に振っていた。と、私の乳房の先、赤く充血した乳首を飾る、十字架のついたピアスを、アルフヒルドが仇でも見たかのように蹴りあげた。

「静かにしろ! 貴様それでも一時は将軍と呼ばれた身か! この恥知らずめ!」

屈辱に、私は再び唇をかみしめて苦痛を堪えた。と、彼女は床にしゃがみこむと、そこ落ちてある、ぼろ布のように引き裂かれ、小水にまみれたバラ色のドレスの残骸を丸め、私に命じた。

「うるさいんだ。お前は。・・・口を開けろ」

彼女が、何をするつもりなのか予期した私は、口を閉じたまま、黙って元、部下の瞳を睨みあげた。しばしの沈黙。と、今度は乳首のリングをぐいぐいと引っ張りながら、もう一度同じ命令をする。

「あ、け、ろ、と、言ってるんだ!」

乳首ごと、乳房全体をもぎ取られそうな苦痛に、私は顔をしかめて、ついには命令に従った。

「あがぁ!」

案の定、私が大きく開いた口の中に、濡れたドレスの残骸がねじ込まれる。
口腔内をいっぱいに埋める異物に、吐き気が込み上げてくる。

「もごっ! むぐっ! むー!」

口腔を満たす布に邪魔され、私の言葉はくぐもった、ノイズとすら言えない音にまで押さえられ、女は口の端に勝ち誇ったような笑みを浮かべた。続いてヘルギが口を埋めた布の上から、猿ぐつわのようにロープをまわし、ついで全身をも身動きできないように縛り上げた。

「・・・さぁ、陛下。これで静かになりましてございます」

女が片膝をつき、そして大神は槍に力を込めた。ぎちぎちと音をたて、リングとラビアがきしむ。

「むー! むぐぐぐうぅっ!!」

その激痛に私が漏らした絶叫も、くぐもり、私刑を観賞する観客のざわめきにかすんで消える。と、そこにやっと助けがあらわれた。

「陛下! わたくしめがお代わりいたします!そのような使い方をなされては偉大なる神槍が汚れまする!」

台詞の内容こそは私をおとしめるものだが、心では私を案じてくれてのものだということは私にはすぐに判った。私の、こんな汚された私の今や唯一の味方の老鍛冶師、ディレンである。鍛冶師の登場と、彼の言葉に、大神はようやく槍を引き、彼に大神を侮蔑した陰部の烏と金銀の人間の紋章の排除を命じた。

老人は工具を取り出し、大神の命令を果たさんと早速作業に取りかかった。
一度は断念した作業を。それでもことさら静かに、私を思いやって。老人の心に答えるため、私は必死に堪えた。相変わらず金鋸は腰から、脊髄に激痛を走らせたが、私に心を砕いてくれた老人に、無力感を与えたくなかった私は、きつく目を閉じ、壊れかけた心の力を総動員してその苦痛に耐えた。大神の仕打ちに比べれば、老人のそれは子守歌に等しかった。これに耐えられねば恥だと、私は、自分自身にそう言い聞かせた。しかし・・・。

「遅い! 貴様はそれでも神軍一の鍛冶師か!」

大神の叱責が飛ぶ。

「恐れながら・・・」
「言い訳など聞かぬ! ディレン! 道具をヘルギに渡して下がれ!」

老人を叱責する大神。老人の済まなそうな視線が、私の瞳を見つめる。視線で詫び、そして命に従う。アスガルドの者で、大神に逆らえるものなどいようはずがない。それでも私は、必死に老人に哀願の視線を送った。しかしその視線に答えたのは、嗜虐的な笑みを浮かべ金鋸を握りしめた拷問吏、ヘルギであった。

「陛下、すぐに済ませてご覧にいれます」

右手に金鋸を握った嗜虐漢が左手で乳首のリングをつまむ。しかも、わざと私の乳首を貫通した部分を、充血した肉ごと、捻りあげるように、である。
乳首ごとピアスを押さえる左の指の直ぐ上を、金鋸を、その振動を消そうともせず、力を込めてごりごりと削り始める。いや、むしろわざと私の乳首に埋もれた銀のリングに振動を与え、痙攣する私の反応を楽しんでいる節すらあった。

連続的な苦痛に、私が白目を剥き、意識をとばそうとする度、指に力を込め、連続的な疼痛とは違った鋭い痛みを与え、私に気絶の開放すら与えようとはしない。全身は脂汗を吹き、心臓が破れそうな程に早鳴り、胸がふいごのように上下する。金鋸がついにリングを切り裂き、勢い余った鋸刃が私の乳首の先端を掻き切った。いや、わざとだ。勢い余って、などではない。

「むぐっ!」

激痛にもがく私にかまわず、断ち切られたリングの切れ目の両端に指を添え、力を込める。もちろん左手は乳首ごとリングを押さえ、環をこじ開ける。もう一方の乳首のリング二本のバールでねじるように引きちぎられ、巻き込まれた乳首が押しつぶされるかの激痛にさいなまれる。

「・・・金なら柔らかい金属だから、楽なもんだよな?」

嘲るように声をかける男。だが、あまりの激痛に私は反応すらすることも出来なかった。

「さてと」

もう一方の秘唇のリングに金鋸を押し当て、ヘルギが問う。

「痛いのはもう嫌か?」

男の言葉に反射的に頷き、そしてこの男がまともに私の身を案じてくれていようはずもない事実を思い出し、後悔する。
案の定、男が手に取った工具は、細工用の金銀を溶かすためのふいごのついたバーナーであった。
肌の直ぐそばを舐める赤い炎と、肉を焼く熱に、私は気が狂いそうになる恐怖と苦痛にさいなまれていた。

炎が勢いよく秘唇をかすめるたび、膣口からとろりとした粘液があふれ出し、こぼれ落ちる。恐怖に喘ぐように膣壁がゆっくりと収縮する。秘唇を焼かれる苦痛を代償に、ついに私の性器を責めさいなんできたリングが溶け落る。そして、引き続いて陰核を貫いていたシャフトが焼き切られる。

それらの作業が終わったころには、私の性器は粘液にまみれ、腰の下には水たまりすら出来ていた。しかし、この防衛機構のおかげで致命的な火傷を負わずにいられたのも事実であった。

赤く焼けた銀が何の容赦もなく、肉に穿たれた貫創から引き抜かれる。
じゅっ。という嫌な音を立てて、私の人生を台無しにした呪われた装飾品の最後のパーツが私を開放した。

口腔に布を詰められ、全身をロープで縛られた私にその言葉は決して似つかわしいものではなかったが、その瞬間、確かに私は、ほっと開放に安堵の息を漏らしていた。両の乳房全体と、腰から太股までを赤く火照らせ、股間から太股までを滴る粘液にてらてらと光らせる私を、大神が忌ま忌ましげに見つめる。

それは、信じていたものに裏切られた王の、悲しみと怒り、屈辱と嫌悪、そして何より、それを汚物とさげすむことで一種あきらめにも似た心の平安を取り戻そうとする瞳であった。私は大神に弁明の機会を望んで、必死にその注目を引こうと縛られた体をばたつかせ、くねらせた。

だが私のそんな態度は、神の慈悲を誘うどころか逆により嫌悪を誘うにすぎなかった。口を塞がれ、動きを封じられ、蛆のように身をうごめかすことしか出来ない私を冷たく見やり、そして大神が静かに宣告した。

「その汚物をこの神界から放逐せよ。人間界でも巨人の国でも構わん。・・・その剣はせめてもの餞別だ。持たせてやれ」

それでも、大神はまだ、怒りの中にも一抹の慈悲を持ち合わせていて下さったのか、これほどの辱めを受けた私から剣を奪おうとはせず、求刑も追放刑と私の最後の名誉を残して下さったのだ。
住み慣れたこの城を去るのは辛いが、私の罪は反逆罪と取られても仕方のない罪だったのだ。

大神の言葉に、アルフヒルドが一瞬、露骨に不満げな表情を浮かべる。だが無論彼女とて大神の決定に逆らうことは出来ない。
無言の不満を見せるアルフヒルドを押し退け、前に出たヘルギが大神に頭を垂れ、慇懃に「かしこまりました」と答える。

その唇に浮かんだ表情に本能的な恐怖を感じた私は、必死に大神の最後の慈悲を求め、彼の注意を引こうと最後の足掻きを見せる。だが私の心は誰にも伝わらず、アルフヒルドは私の胸を踏みにじって忌ま忌ましげに私の態度を咎める。

「反逆者に追放刑など。・・・これほどの温情を受け、まだ不満かや!」

不満でもがいているのではない。大神の判決が侵されることを恐れての足掻きだ。

「アルフヒルド! ライラ様の剣をお持ちしろ!」

口の端に下卑た笑みを張り付け、ヘルギが立ち上がる。

「この女を追放刑に処せとの大神のご命令だ」

立ち上がったヘルギは縛られた私の翼を掴むと、縛られたままの私を引きずりながら神宮の地下へと向かう。そして厳重に封印された扉の前で足をとめた。

「閣下は、この女を「天界から」追放しろとおっしゃった。どことはいわれていない」

封印された扉の向こう。そこは確かに天界ではなかった。邪悪な魔物どもを封じ込めた扉の向こうは魔界・・・ニブルハイムと言われる別世界。ヘルギが扉を開けると、ムッとする異臭と障気が立ち込める。そして、扉の向こうの奈落に向けて、私の剣を放り入れた。

「大神は、剣を餞別に、と、おっしゃった。だが・・・」

男の顔に嗜虐的な笑みが浮かぶ。

「女の戒めを解けとは、一言もおっしゃられなかった。そうだろ? アルフヒルド」

その言葉を聞き、私は耳を疑った。一瞬遅れて響く、気が狂ったかの二人の笑い声。

「むっ! むぐーっ! むぐーっ!」

何故、ここまでされなければならないのか。私は全く理解できなかった。そんな私を優しく抱き抱え、そしてヘルギは手を離した。私の体が奇妙な浮遊感にとらわれる。

私は天界を追放されたのだ。餞別の剣を持たされ、身動きすら出来ずに縛られたまま、悪鬼妖魅のうごめくニブルハイムへ。頭上をこだまする、二人の笑いがいつまでもいつまでも耳を離れなかった。

下とはいっても、物理的な上下ではない。
気がつくと私は身動きの出来ない恰好のまま、じめじめした泥緑色の荒野に転がっていた。
沼地を思わせる、肌を汚す緑灰の汚泥で覆われながら、その土地には樹木どころか苔一つ生えてはいない。
空には雲はなく、さりとて太陽もない。
一面の空全体が灰色の薄明かりを地上に投げかけている。
薄暗く鬱陶しく、空気全体がじめじめと冷たく、それでいて蒸し暑いかのようにじっとりと汗がにじんでくる。沼沢の湿度と荒野の不毛を併せ持った土地。いや、一切の生命が感じられない訳ではない。
汚泥の中から身を起こそうと、唯一自由になる翼を背から引き出し、汚泥に叩きつける不快さに耐えながら、仰向けの体を起こす。

と、汚泥の中でも比較的水分の多い部分の、泥沼の中でぬめぬめした生物がでたらめな痙攣にも似た運動を始める。
両生類の無足幼生にも似た無数の生物が、まるで陸にあげられた泥鰌のように一斉に動き出した。
捕食動物が近くにいれば、間違いなく餌食にされそうな、力強くも無意味で、まるで機動性というものを持ち合わせていない激しい運動。
どうみてもこの土地に適応できていない肥大した頭部と太く短い胴をもった小動物。
立ち上がり、海草のようにゆらゆらと身を揺らす、赤い蚯蚓のような無眼の妖蛆。
アスガルドの常識と、比較的慣れたミッドガルド、人間界のことなら理解もできる。
だがここは、それらと比べてあまりにも異質な世界であった。

何度も、自慢の純白の翼を汚泥に叩きつけ、どうにか私は泥の中から体を起こすことに成功した。
私のばたつきを、雨とでも誤解したのか、身を起こした泥中の妖蛆、怪虫の蠢きに不快感を誘われながらも、私は周囲に眼を走らせ、剣を探す。幸いそれはすぐに見つかった。
汚泥に半ばまで埋まりながらも、泥緑の中に金の輝きが見える。
まずは刃で縄を切る。すべてはそれからだ。
両手を後ろ手に縛られ、両足は膝で曲げられ、左右の太股と膝下を一緒に縛られ、正座のままでわずかずつ体を這いずらせる。

股間にはりつく冷たい汚泥が与える不快感に我慢しつも、私は体を前進させる。
体をゆするたび、縄で絞り出された胸が小刻みに揺れ、惨めさが増す。
が、せめてもの救いは、この無様な姿を誰にも見られていない事だ。
膝を支点に、股関節だけで前進を続ける。
やがて、ふと、周囲の妖蛆たちが不器用にのたうちつつも、私の方へ近づこうとしている事実に気付く。
そして、そのことに私が気付いたと同時に、蚯蚓様の怪虫の一匹が私の太股に触れる。
ぬるりと濡れた軟質のゴムのような体が、私の太股に絡みついてくる。
そして、精一杯体を伸ばして、太股をなで回す。

あまりの不快感に思わず悲鳴が出そうになるのを、辛うじて堪える。
そして、それを無視して、もう一歩、脚を伸ばす。
できるだけ距離を稼ごうと、大きく突き出した左膝、残された右膝との距離が開き、自然、大股開きの形になる。

無防備にさらけ出され、左右の股関節の開脚に自然、左右の秘唇が広がり、赤い秘肉が覗く。
そして、その肉をついばもうとするかのように、オタマジャクシに似た妖蛆の一匹が躍り込み、身をくねらせる。

「嫌っ!」

今度は本当に悲鳴を漏らして、私はあわてて脚を閉じた。
例えるなら、ぬるぬるしたゴムボール程の固さのゆで卵を内腿に挟み込んだかのような感覚。
だがこのゆで卵は太く短い尾を持ち、太股の間を泳ぐように蠢く。
股関節を閉じ、括約筋に力を込め、妖蛆の侵入を拒む。
やがてそれは秘唇と肛門の上を滑り抜け、お尻の間からもとの泥の中へと飛び込んでいく。
脚を縛られ、伸ばせない為、正座のままで泥の上を膝と脛で歩いていた私だが、妖蛆の予想外の反応に、足止めを余儀なくされた。
頭部に対し、矮小すぎる運動器官しか持たない連中でさえ、手足を縛られた私よりははるかに機動力を持ち合わせている。無論私もこんな矮小な蛆虫に怯え、身を縮めるのは癪だが、さりとて連中のなぶりものにされるのはもっとごめんである。

しばらくの間進行の足を休め、周囲の把握に勤める。
太股と言わず、足の裏と言わず、不快な粘液をまとった妖蛆怪虫がくねり、体を擦りつける。
大部分は網の中の魚のように無意味に跳ね回るだけだが、私の傍に居るやつらは発情したオスのように絡みついてくる。特に不快なのは正座の形を余儀なくされたせいで、微妙に地面から離れた股間を狙うかのように踊り、のたくり、跳ね回る連中であった。
体を硬く、括約筋を締め、侵入を阻んでいるとはいえ、太股を閉じられないのが守りの面での気持ちを心もとなくさせる。

それにしても、連中の目的が掴めないというのも不安であった。
無論この矮小な蛆虫どもが軍天使の私を欲望の対象としているはずはない。
恐らくは捕らえ、食らうための獲物と見ていると考えるのが妥当だが、見たところ肉を食い破る為の口も牙も持っていない連中だ。恐らくは

食えるものと食えないものの区別もなく、何らかの方法、恐らくは体温か振動を感知して寄ってきているだけの下等生物だろう。
もうしばらく耐えて、連中に無駄という言葉の意味を理解させてやれば、おとなしくもなるだろう。
肥大したおたまじゃくしににた連中は、括約筋を締めていれば何とかなる。
不快なのは秘唇を割って入り、膣口や尿道をさする直立蚯蚓であった。
腰を揺すり、爪先の甲で直立蚯蚓を踏みつける。細い体に似合わず意外と頑丈な筋肉組織を持つのか、押しつぶした感触のみで内容物のはみ出した感触は足に伝わっては来ない。
案の定、足の下のそれは必死に逃れようとのたうつ感触を私に伝える。

と、双臀の開いたその瞬間に、別の蚯蚓が、今度は肛門を襲う。
あわてて肛門括約筋を締めようとするが、昨夜の非道に屈伏し、二本の肉槍にこじ開けられた菊門はいまだその締閉力を取り戻してはおらず、細い肉紐の侵入を許してしまう。

細い肉紐とはいえ、生来の蠕動とは逆方向に異物が上昇してくる不快感に、額に脂汗が浮かぶ。必死に括約筋を閉じ、その侵入を止めようとするが、締めれば締めただけ締まる弾性にとんだ筋肉を持つ肉紐の侵入を拒む事は出来ない。しかも、長い。
侵入を許したのはわずか一匹、それも伸縮を繰り返す蠕動と腸壁を掻く異物感に相当な長さが私の中に入り込んだのが感じられるが、一向に侵入しきる気配がない。腸の中で蠕動し、体内を掻き進まれる不思議な感覚に、体が痺れ、頭がぼうっとしてくる。

泥の上に正座、不動のまま、私の神経は侵入者に掻き進まれる腸壁の感覚に集中していた。
眼は周囲の状況を写していても見えず、耳はのたうつ音を捉えていても聞こえない。
全身の筋肉が弛緩し、唇からは小さな呻きとともに細くよだれがこぼれる。
と、続いて二本、三本の肉紐が、同じく肛門から腸に躍り込んできた。

「ひぐ」

括約筋を押し開かれ、異物の侵入する感覚に思わず呻きが漏れる。
ずるずると何本もの肉紐が無防備な体内に侵入する感覚に、しばらく麻痺していた私の神経がゆっくりと回復し、そして恐怖に変わった。

「うわあああっ!」

悲鳴をあげ、必死にその侵入をくい止めようと括約筋を締める。
双臀の筋肉にも力を込め、そして全身を揺すって抵抗する。両の手が使えれば随分状況は違うのだが、今は両手を縛られ、封じられている。
その間にも四本目、そして五本目が、彼ら自身の体表の粘液を潤滑油代わりに、さらに侵入を続ける。
もがき、逃れようとする私の、縛られた両足をさらにその上から肉の紐が鞭のように絡みつき、動きを封じる。
体をひねるあまり、勢い余って前方にのめり倒れる。
首をひねり、顔面から泥に突っ伏すのは免れたが、状況はよくない。
その隙に別の肉紐が今度は首に絡みついてきたのだ。

「ぐっ」

弾性に富み、細い肉紐は力自体は対してなく、絞め殺される心配はなかったが、それでも縛られ、身動きする術のない私の足掻きを封じ、さらに拘束する程度の力は十分に持ち合わせていた。軟質のゴムのようなその体は、私の抵抗に合わせて伸縮しながらも決して私の体を開放しなかった。
細長い、軟質のゴムに似た肉紐が何本となく腸から体内に侵入し、不快な苦痛と充填感を生み出す。
何匹もの肉紐が長い体の尻尾の先までを私の体に飲み込ませ、さらに奥へと蠕動を繰り返す。
一匹が尻尾までを飲み込ませ、肛門に余裕が出来ると続いて次の肉紐が待っていたかのように双臀を舐め、体内に侵入する。
一匹二匹のうちは不可解な、吐き気を伴ったくすぐったさであった感覚は今や完全に吐き気と不快感、そして耐えがたい苦痛へと変化していた。
限界まで満たされた腸が、汚物を排泄するかのように蠕動を繰り返し、侵入者を排除しようとする。
今までで最も効果的な自律抵抗に、しかし侵入者も全身をのたうたせ、抵抗を免れようと奥へ奥へと体をくねらせる。
侵入者と私の不随意筋。両者の激しい争いの場と化した私の腸は、悲鳴にも似た危険信号を苦痛の形で私の脳に送りつけてくる。

「うわぁぁぁああぁ・・・や・・・破れ・・・る・・・」

全身から脂汗をしたたらせ、動きを封じられた体がびくびくと痙攣する。
体内を侵す生きた肉紐が中から腹を膨張させ、波うつ腹がまるで臨月の妊婦のように迫り出す。
しかもうつ伏せに動きを封じられた今の私には、その圧迫が生み出す苦痛は耐えがたいものであった。
迫り出した腹を地面に押しつけ、結果、高く突き出すことになる臀部。
腸の蠕動で吐き出される肉紐が、捕食者から逃れる小動物のように必死にもがき、再び私の肛門を擦り、腹の中にその体を滑り込ませる。
あまりの苦悶に、私は叫ぶ気力も失い、やがて、喘ぐような呻きととめどもなくあふれるよだれを唇の端からこぼすことしか出来ない状況にと陥っていた。必死に締めつけていた股間の筋肉が緩み、秘唇と膣口が喘ぐようにひくひくと、ゆっくり痙攣する。
膣口がぱくぱくと痙攣するたび、ねっとりと熱い粘液がしたたり、太股を這う。

泥の沼の上、身動きを封じられた私は炎天下の蚯蚓のように苦悶にのたうち、体をくねらせ、喘ぎを漏らしていた。
どのくらいの間、そうしていたのであろうか。
苦悶に頭の中がかき回され、もやがかかったかのように呆然とする。
周囲の状況が感知できなくなって久しい私の耳に、何かの羽ばたく音が飛び込んでくる。

鳥か?

双臀と、背の、翼の付け根に鉤爪の食い込む鋭い痛みが走り、急速に脳が覚醒する。
かつては神軍最強の軍天使と呼ばれた私だ。
この手の、皮膚を切り、肉を裂く痛みにならいくらでも耐えて見せる。
肉紐の絡みついた首を精一杯ひねり、目で背中を確認する。
やはり、鳥だ。それも、かなり大きい。
長い蛇のような首とはげ上がった頭部は禿鷹のものだ。
だが、その肉体はそんな腐肉食いのものよりははるかに大きく、力強かった。
尾白鷲よりも太く、力強い足が私の翼を捕らえ、爪を食い込ませる。視界の影で、純白の羽毛がじくじくと血に染まる感触が肌を伝わる。
長い首と、同じく長く、太いくちばしをもった頭をもたげ、化鳥が周囲に視線を走らせる。
恐らくは猛禽特有の強力な視力が、数キロ四方を索敵しているのであろう。
今の状況で、この嘴でついばまれるとさすがに私の命も危ない。
腹を圧迫される苦悶と、爪を突きたてられる痛みを堪え、体をゆすって化鳥に危機感を与える。
だが、巨大な化鳥はそんな私の抵抗をも意に介さずといった風にバランスを整え、太い足の一方を私の顔に乗せ、押さえつける。視界の隅の長い首が双臀の影に消え、鋭い嘴が秘唇をなでる。
まさか、ここから私の内臓を食らおうというのか、恐怖に震える私の秘唇に、化鳥の硬く濡れた舌が触れる。

「や、やめろ・・・」

だが、私はさながら蛇ににらまれた鼠のように、もはや抵抗することはできない。
万一コイツを怒らせて、その、私の体で最も敏感で、柔らかい急所をついばまれるのを恐れてしまっているからだ。
しばらく、そこに舌を這わせ、喉の渇きを癒すと、今度はその嘴を全く無慈悲に私の肛門に突きたてる。

「うぎゃっ!」

全く無慈悲に、獲物を捕らえるため、その隠れ家を突き崩すかのように、私の中に通じる筋肉の門が押し開かれる。括約筋を押し開き、嘴を突きたて、そして、私を引き裂くかのように嘴を開く。
メリメリと音をたてて括約筋が引き延ばされ、蹂躪される。
そして、開かれた嘴が私の中に潜む肉紐をつまみ、一気に引き抜く。
細い蛇のような首に似合わず、力強く引き抜かれた嘴は、腸の中で絡み合い、もつれ合ったゴムのような肉紐をくわえ、それを大きく引き延ばす。
引きずり出され、引き延ばされる肉紐に巻き込まれるように、肛門の内側の粘膜がまくれ上がる。
化鳥が、さらに奥に隠れた肉紐を引き出すためにいったん嘴を離し、嘴を再び肛門にねじ込ませる。
その間にも肉紐はこの捕食者から逃れようと全身を震わせ、私の中に身を潜めようとする。
再び嘴が肉紐を引きずり出し、肉紐と化鳥の生死を賭けた争いが私の中と外とで繰り広げられる。

化鳥が、今度はそのはげ上がった頭部から長い首までを私の腸の中に突き入れ、嘴を何度となく開閉し、優位なポジションを狙う。
私の腸壁の事など気にも止めず、双方の争いは続く。
腸の粘膜は傷つき、どろどろした粘液と血にまみれた化鳥の首は、その粘膜を潤滑液に、次第に機動力を増し、激しく、でたらめに運動を繰り返す。
その度に肛門からは血と粘液が滴り、そしてそのすぐ下の膣口からも透明な液体がだらだらとあふれ出す。
文字通り内臓をかき回される苦痛に、全身が痺れ、脳がかすむ。
頭の中を真紅の閃光が幾度となく瞬き、紫の稲光が走る。

「あぐ、や、やめてくれ・・・」

無論この魔物どもに言葉が理解できると期待しての事ではない。
たまらず、哀願せずにはいられなかっただけの事だ。
無論私の哀願に連中が耳を傾けようはずもなく、両者にとって私は意に介されざる存在、砂岩の割れ目か野鼠の穴にすぎない存在でしかなかった。
化鳥があきらめるか、肉紐が力尽きるまで永遠に続くかと思われた生命の綱引きは、しかし第3者の介入で唐突に打ち切られた。
腸壁を擦り、肛門をめくりあげ、蹂躪の限りを尽くしていた化鳥の首が突然、力を失う。
そして、私の双臀に熱いしぶきがこぼれる。
何者かが、一刀の元に化鳥の首を叩き斬ったのだ。
化鳥の蛇のように長い首に腸を埋められ、圧迫されながらも、私は開放された安堵感に涙をこぼしてため息をついた。
かすむ目で開放者の姿を探そうとするが、逆光のせいか、はたまた気絶寸前の脳のせいか、その姿を正確に捉えることはできなかった。
ゆっくりと首を戻し、泥にまみれた顎に体重を預けながら、涙を流してもう一度、ため息をつく。
開放者たちに今の無様な姿を見られる羞恥心も誇りも何もなく。
私は体の命じるまま、緊張の糸が切れ、弛緩する体に任せ、放尿し、そして化鳥の生首を肛門から無様にひりだし、そのまま意識を失った。

ミルク色の濃い霧に意識を覆い隠され、全ての思考を放棄していた私の脳が、再び情報の処理を再開しはじめて、最初に感じたのは全身に浴びせかけられる熱い水流だった。
髪、顔面、肩、胸、翼と言わず、全身に熱い水流を感じる。
次第に意識がはっきりしてき、眼と気管に入った水流に眼を擦り、咳込む。
気がついた私が把握した事実、その屈辱に、私は一瞬、呆然と、全身を凍りつかせた。
全身の戒めを解かれ、手足に絡みついた肉紐はほどかれていたが、意識を失った私は近くの岩にもたれ掛かるように彼らの前に跪かされ、そして私の回りには何人もの狩人たちがその性器を剥き出しに、私におしっこを浴びせ掛けていたのだ。
屈辱に顔を真紅に染め、その場で怒りの形相もあらわに立ち上がる。

「貴様たち! 何を!」「気付いたようだな? 気付けがなかったから、眼を醒まさせてやろうと、水でもかけてやろうとおもってな」

狩人・・・弓と矢筒の武装から、私はそう判断した・・・彼らのリーダー格の男が、私の怒りをも意に介さずといった口調で冷やかな冷笑とともに私に答える。
私が一歩を踏み出し、男の胸ぐらを掴もうと右足を前に出したとき、まるで、その足が私の足でないかのように力なく、崩れ落ちた。

「おいおい。虫ども相手に散々気ィ出してたんだ。まともに足腰なんざたたねぇだろうよ。それに俺たちが助けてやらなきゃ、お前ェ、イキっぱなしで帰って来られなくなってたトコだぜ」

目障りなオーバーゼスチャとともに吐き捨てるリーダーの言葉に、他の仲間も嘲るように笑い声をあげる。
言葉の意味はよく分からないが、私にも彼らが私を嘲り、馬鹿にしていることと、無礼にも私があの状況で感じていたと言わんばかりの言葉だけは理解できた。

「なんだとぉ?!」

眉をつり上げ、彼らを睨み付ける。が、そんな私に威圧感がないのは、自分でもよく理解できた。
先程まで、発狂寸前の責めに喘ぎ、のたうち、彼らの手でどうにか助けられ、そのまま気を失い、全身におしっこを浴びせかけられた女が、多少すごんだところで滑稽なだけだろう。
屈辱に唇を噛み、私はそれきり押し黙った。
両手で胸と性器を隠し、できるだけ体を小さくして彼らの視線から裸体を守る。
汚泥を洗い流され、代わりにおしっこまみれになった翼で、体を隠す。

「いっしょにこいよ。可愛がってやるぜ」

男たちが嘲りを隠そうともせず、私の髪を掴み、引き立たせる。
私はその手を振り解くとその場にすっくと立ちあがり、意を決して男たちに対し、戦闘態勢をとって見せた。ここまでの姿を見られた以上、今更、こと裸身を晒すという点において羞恥心はない。
これ以上の侮辱を許すぐらいなら、いっそこの場で全員殺してやっても良いのだ。

唇の端にことさら邪悪な笑みを浮かべ、周りの男たちを見回す。
それに、私のあんな姿を見られたというのも雪ぎがたい屈辱だ。
視界の隅、剣は飛べば手のとどくところにある。
不意をつけば一瞬だ。男たちは私を完全に侮っている。
私は、体を翻すと同時に翼で男たちの眼前を薙ぎ、彼らがのけぞったその隙に剣に飛びついた。
男たちが持つのは、弓と短い山刀だけ。この間合いでならこちらの大剣が有利だ。
剣を構え、男たちに向き直る。
と、膝の力が抜け、腰が落ちる。

?!

まるで痺れたように腰が立たない。今まで気づかなかったが、まるで体が言うことを聞かない。

「粋がってるんじゃねえぞ。この女。あんだけ気ィ出してて腰が砕けないとでも思ってたのか?」

剣を杖に、信じられない面持ちでその場にへたり込んだ私に、狩人たちの頭領が語りかける。
だが、立って立てぬことはない。再び、剣に飛びついた時の勢いで立ち上がる。

と。
頭領が顔色ひとつ変えずに弓を構え、矢を放つ。
鋭い矢が狙い違わず私の太股に突き刺さり、鋭い痛みを放つ。
思わずうめきをもらし、膝をつく私に、男たちが冷たい視線を投げかける。
まるで手負いの狐を追いつめる狩人のような視線を。
第二の矢が左の二の腕に突き刺さり、次の矢が今度は右の腿に刺さる。

「あぎっ!」

この程度で音をあげるつもりはないが、それでもうめきをもらさずにはいられない。

「く、この・・・」

痛む足に力を込め、無理矢理立ち上がる私から間合いを取り、サイドから別の男が次の矢を放つ。
横から、心臓を避けて私の肥大した乳房を矢が串刺しにする。

「ぎいぃっ!」

さすがにこれにはたまらず私も白目をむいて涙をこぼす。
続いて立て続けに3本の矢が右の乳房を射抜く。
剣の柄を強く握り締め、全身をおこりのように震わせながら、のたうちまわるほどの激痛に必死で耐える。
口の端から泡を吹き、見開いた瞳から涙を垂れ流し、私は苦痛に耐える。だが、この痛みは尋常ではない。
直接、敏感な乳首や股間を責め立てられた訳でもないのに、大神やアルビオン王にそこを責め立てられたときに匹敵する激痛が私を襲う。

何故?

と、その時狩人の頭領が突然、大声で笑いはじめた。

「はは、やっぱり『蟲』に寄生されちまったみたいだな? 可哀相に。連中はほかの生物の体内に寄生して、そこを住処として生活するんだが、当然、住処が潰れちゃ困るわけだから、宿主が怪我したら、必死に死なねえように修理してくれるんだよ。だけど、こいつが戦士たちに利用できないのは、宿主に死なれたら困るんで、連中は宿主の神経を過敏にする毒を垂れ流すらしいんだ。すると宿主は危険を犯せなくなって、ずっと生存の可能性が増えるわけだ」

そして今度は仲間たちの方に話し掛ける。

「へへ、それなら急所避けていたぶる必要もねぇぜ。この女がごめんなさいするまで矢を射掛けてやっても、この女はくたばったりしねえんだからな」

まさか、そんな馬鹿な。耳を疑う私に、今度は狩人たちが全員で矢先を向ける。

「死なない、でなくて、死ねない、ってのは、さぞ苦しいんだろうな」

にやにや笑いながら、頭領が、そして狩人たちが矢を放つ。
足といわず腕といわず、何本も何本もの矢に貫かれ、私はそのあまりの激痛に声すら上げることもできずに失禁した。特に、ことさら狙われたのが両の乳房と、下腹から股間にかけてだ。陰唇も尿道も矢尻に引き裂かれ、ずたずたにされる。
気絶しそうなほどの激痛の中、しかしますます意識と苦痛だけが鮮やかになる。

「気絶したくてもできねえだろう。そりゃ、宿主が気絶したりしたら、寄生してるほうはたまらんからなぁ」

最後の力を振り絞り、力強く開いた翼にも雨のように矢を受け、もはや首から下で私の身体で矢を射られていないところはないというほどに、全身に矢が突き刺される。
肉にねじ込まれた矢尻が、身体を動かす度激痛を発する。
そのためのたうちまわることもできず、両膝をつき、剣を杖に体重を預け、私は必死に激痛に耐える。
全身の神経がパニックを起こし、私の全身からは滝のように脂汗が滴り、体液が垂れ流しになる。
心臓が鼓動を打つたび、全身から燃えるような痛みが脊髄を駆け抜ける。

「剣を捨てな。でないともう一斉射いくぜ」

頭領の言葉に、私の指が剣の柄を離し、地面につく。
両手両膝で四つ這いになった姿で、私は恐る恐る顔を上げた。
私を取り囲む何十もの矢尻に、私はついに、涙を浮かべて敗北を認めた。

「頼む。もう許してくれ・・・」

ついに剣を捨て、服従の意志を示さされた私に、男たちはまず手かせをはめ、そして長い鎖のついた首輪で私の身体を拘束した。
そして、数人がかりで私の身体を押さえつけると、両足に突き立てられた矢を強引に引き抜き始める。
暴れればほかの場所の矢尻が肉を裂く。
私は全身をこわばらせてその激痛に耐えさせられる。
周囲の肉ごとえぐり、もぎ取られる矢尻。だがその傷は見る間にふさがり、後も残さず完治させられる。

「こいつはすげえな。何匹くらいこんだんだ?」

頭領が下卑た笑いを浮かべ私の顎を掴み、顔をあげさせる。
男の顔を睨み付け、私は視線をそらす。と、頭領が何本もの矢尻の埋まった私の胸を力いっぱい握り潰すように揉みしだく。

「ぎっ!」

あまりの激痛にうめきをもらし、私は歯を食いしばる。

「答えろよ」

男の指がごりごりと、私の柔肉に埋まった鋼の塊をもてあそぶ。
その激痛についに屈した私は、耐え切れずに涙まじりに答える。

「解らん!知らん! 見てない!」

そんな私に嘲るような笑みを浮かべ、頭目が私の耳元でささやく。

「馬鹿な女だな。素直にすれば無駄に痛い思いせんでもすむのにな」

その言葉に、私は苦痛と悔しさに泣き出したい気持ちを必死にこらえた。
男の指が、私の胸と陰部を撫で擦る。針鼠のように矢を突き立てられたそこが、自分でも信じられないほどの熱を持ってずきずきと疼く。
そんな乳房をわしづかみにして、男が私を立たせる。

「そろそろ落ち着いただろう。そら、歩け」

首輪につながれた鎖を引かれ、私は彼らの後について、裸のままで連行される。
力なく、手枷でつながれた両手を股間に垂らし、もはや抵抗する気力も奪われた私は黙って彼らの後に付き従った。
途中、荒野を素足で歩く私の足に、彼らがせめてもの情けか、恐らくは何らかの爬虫類のものであろう、仕留めた獲物の革を巻き付けてくる。
おかげで幾ばくかの苦痛は和らいだのだが、相変わらず胸や身体の矢はそのままであった。
そして、私をいたぶるように鋼の埋まった私の身体を男たちが時々、撫で擦る。

「アスガルドの女か?」

途中、男たちが私の身の上を尋ねてくる。黙っていると、矢尻の埋まったままの股間を蹴り上げ、無理にでも語らせようとする。

「そ!そうだ!」

悲鳴まじりに答える私を、彼らはにやにやと値踏みするように見回す。

「そうだろうな。奇麗だからな、あんた。・・・でも、ニヴルハイムの住人はアスガルドの住人を嫌ってるからな。逃げそこなって捕虜になったあんたがこれからどんな目に合わされるか想像すると、同情するぜ」

同情など微塵も感じさせぬ口調で、別の男がささやき、軟体動物のような舌で、私の頬を舐め上げる。
何を言っても無駄だ。反抗すれば酷い目にあわされる。
そう解ってはいても、私は男を睨まずにはいられなかった。

「反抗的な目だな?」

案の定、男が私の陰核を思いっきりつねり、ひねり上げる。
うめきをあげることの無様さ、悔しさに、私は唇をかんでうめきを押え込む。
と、男が指にさらに力を込める。いや、最初から男はたいして力を入れてなかったのだ。
ただ、私の神経が過敏になっていたせいで、軽くつままれたのをひねり上げられたと誤解していたに過ぎなかった。

「ひぎゃっ!」

陰核に、ねじ切られそうな激痛が走る。私の死にそうな悲鳴に、男はにやにやと口を開き、続けた。

「おいおい、この程度で泣きをあげるとは、軟弱な奴だな。俺はまだ大して力を込めてはいないんだぜ。それとも、あの『蟲』って奴はそんなに凄いのか?」

その言葉に、私は本気で脅え、信じられないといった表情を浮かべていた。
力を無くした唇をかすかに震わせ、自分の体の変化におびえる。
何故だ。何故私がこんな目にあわねばならんのだ。
その不条理さに言いようのないやるせなさと、ぶつけどころのない怒りと、そして、この先の暗雲垂れる行く末に恐怖を感じる。

「・・・なんで、なんで私がこんな目にあわねばならんのだ・・・」

涙すら浮かべた顔を真っ赤に染め、誰に言うとなくその泣き言を口にする。
私の罪は、これほどまでに重いとでも言うのか?私がいったい何をしたと言うのだ!なぜ、私だけがこれほどの目に合わされなければならないというのか。

「そうだよなぁ。可哀相に。アスガルドの女がこんなところに捨てられたら、殺されるより酷い目に合わされることぐらい、誰にだって解ることなのによ」

私の言葉に、嘲笑をたたえて男が応じる。
そして、太い指で私の尻をまさぐり、撫で回す。
赤く後の残りそうな強い指の責めに、顔をしかめ、私はただ、黙って男を睨み付けた。
屈辱に顔を染め、泣き出したくなるのを必死にこらえ、それでも残ったわずかなプライドにしがみついて、無言の抵抗を示す。

「それというのも、オーディンの奴がおれたちをこんなところに追い込みやがって!」

と、男の節くれだった太い指が、私の肛門を貫く。

「おまえが、その憂さ晴らしに供されるわけだ」

中指、続いて人差し指、薬指、そして左の中指、人差し指と、次々に私の肛門の括約筋を押し伸ばし、かき広げ、もてあそぶ。私を見捨て、追放し、こんなところまで追いやった男へのうっぷんを、私が一身に受けることになる。その不条理さと屈辱、そして引き伸ばされ、もてあそばれるリング状の筋肉の生み出す痛みと、指が突き入れ、掻き出されるたびに溢れ出る腸のなかの粘液の不快感と情けなさに、瞳に涙がにじむ。男の左右の八本の指が肛門の括約筋を鷲掴み、左右に引き裂かれる。

「あぐっ」

肛門から引き裂かれ、身体を裏返しにされるかの感覚に、脳がパニックを起こしそうになる。
腰と膝ががくがく痺れ、ついへたり込みそうになる。
膝ががくがくして立っていられなくなる私のからだを、肛門に差し入れられた男の指だけが支え、余計に肛門が避けそうになる。
おもわず両手を男の肩にかけ、焦点のずれた瞳を虚空になげ、私は全身を震わせて、声にならない喘ぎをもらす。
私の肛門と、秘唇の間から、信じられないぐらい濃い、ねっとりとした体液があふれ、滴る。
もはや自分の体重を支えることすら放棄した足は、心臓が脈打つと同時に痙攣し、弛緩した下半身とは対照的に上半身は緊張し、このすさまじい感覚に必死の抵抗を示す。
私は歯を食いしばり、瞼をきつく閉じ、漏れ出しそうになる喘ぎと涙を押え込んだ。

「なんだ、おまえ、ケツが弱いのか?」

男が問う。
だが、今口を開くと私の口からもれるのは、苦悶のうめきとあえぎだけだ。
そんな恥ずかしい声を上げたくない私は、唇を噛んでうめきを押え込んだ。
男は、ぬるぬると粘液をあふれさせるその穴から八本の指を引き抜くと、完全に膝と腰の砕けた私を地面に突き飛ばし、這いつくばらせた。
そして、仲間たちの視線も気にかけず、当然の権利のごとくいきり立った性器を私の肛門に無造作に突き立てた。

「はぐっ!」

たまらず、私の唇からうめきがもれる。

「おう、みんな、このおねーさんはケツの穴ほじってもらうのが大好きだそうだ。で、みんなでこの女楽しませてやろうぜ」

男の言葉に、十人を越えるその仲間たちが私の周りを取り囲み、好奇の笑みを浮かべる。
おびえる私の身体を数人がかりで押え込み、そして執拗に、肛門だけを凌辱する。
ひくつき、腸の粘液と男たちの吐き出した汚物をしたたらせるその穴で、男のものが果てるたび、次の肉槍が疲れ果てたその穴を掻き回し、めくり上げる。
執拗に繰り返され、永劫に続くかと思われる責め。その強烈な感覚に何度も、気が狂いそうになるのを必死にこらえ、それでいて気絶することすら許されず、私はついに群がる男たちのまえですすり泣き、いやいやをして許しを請うた。
十数人がかりで、ただひたすらそこだけを責められる壮絶な凌辱に、私はえんえん叫び、泣き、わめき、ただ嵐が過ぎ去るのを待つ無力な小鳥のように耐えしのぐことしか許されてはいなかった。

ただ、その排泄器官だけで延々男たちの相手をさせられた私は、その日の日暮れまでかかってようやく、一通りの男たちを満足させ、束の間の休息の時を与えられた。

だが、無論解放されたとき、私のそこは焼けた鉄棒でも捩じ込まれたかのように熱く、赤く腫れあがり、そしていつまでも拭われることのない異物感と、垂れ流しに流れる血の混じった粘液に悩まされ、その夜はろくに眠ることすらでなかった。

そして、ようやくうとうととしかかった翌早朝、奴隷にするよりもなお手荒く蹴り起こされた私は、全裸に、トカゲの革を靴変わりに足に巻いただけの姿で、鎖で引かれながら、荒野の旅を再開させられた。

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